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そんじゃここまでだ、さよなら

section-35

すきとか、きらいとか、よくわからない。だけどあなたがいない世界線より、あなたがいる世界線にいたいなと思う。まったくの他人で、わたしの人生には何ひとつ関係のないことにいちいち感情を乱されている自分がいることに気付かされるから、ほんとうは出会いたくなかったけど、今見えているものぜんぶ、出会えてうれしいなと思う

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今自分が考えていることや、自分の中にくすぶっている気持ちをあらわす言葉がなにもない。たぶん世界中を探せばあるのだろうけれど、わたしの拙い言葉と足りない語彙力では言い表せないのだと思う。ぜんぶ知られたくないけど

無理やり表現するのならば、わたしはいつも人間という生物から隔離されているような気がしていて、そういう離人感みたいなものが相手にどんな感情を抱いたときであってもわたしの邪魔をしているということ。ガラスに隔てられているから、手を繋げない。体温はわかるのに、指の感触はわからない。ガラス越しに手と手をあわせることはできるのに、手をつなぐことはできない。もしかしたら、だれの手でも同じなのかもしれない。それが人間でさえあれば

この離人感はいつもわたしにつきまとっている。家族に対してでさえもそう思うのだから、他人に対するガラスがどれだけ分厚いかなんていちいち表現していられない。そのくせ、自分にとってとても重要なことが相手にとってさほど重要じゃないんだろうと想像するだけで気が狂いそうになる。わたしにとって全ての祈りを捧げるほど大切で必要なひとやものが、相手方にとってもそうであるわけではないということ。そういうのを乗り越えて生きている人間たちをガラスに挟まれたはるか遠く離れたところで見ながら、結局はわたしがいちばん人間で、人間に対する執着心が恐ろしいのだ。

 

ガラスを隔てた先にいる人間のこと、大切に思うなよ

 

わたしの思っている「大切」って、どんななんだろう。だれかを大切に思うことがあまりにも少なすぎて、うまく言葉にならない。ただ、わたしが抱え込んだ感情に口出ししてくるわたしの数が多くなる。「そんなの無意味じゃん」「あんたごときがそんな気持ちでいていいわけないでしょ」「中途半端に期待するとろくなことにならないの自分がいちばん知ってるくせに」それに対してうるせーわたしの勝手だろって言えるほどわたしはいい子じゃない。わたしの本体はわたしの感情なのかもしれない。

 

あなたのいやなことぜんぶ殴りたい。いちど手をつないだら二度と離せない。あなたの横顔を見て引け目を感じてしまう。もうどこへも行けないような気がする。わたしはここで終わりだ

 

ずっと、心の奥で何かを叫んでいる。必死に聞こえないふりをしているわたしもまたわたしの一部だ。ほんとうは、ほんとうはなんて言っているのかぜんぶ知っている。震えを噛み殺している。だけど、それを知りながら、それでもわたしはわたしを遠くから見ている。鼻で笑っている。具現化した感情を振り回しているわたしもいる。何が正しいのかわからない。ずっとわからない。

ほんとうにわからない?わからないふりをしているのかもしれない。わたしのきもちじゃない。どこから来たのかもわからない。この意味のわからないきもちから救われたい

 

ガラス越しでいいから笑ってほしい。あなたのいやなことはぜんぶわたしに預けてほしい。わたしの知らないところで、あなたの人生を動かさないで

 

ああ、これが愛情だったらどうしよう。

 

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